sakuma51’s blog

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成田氏からの11月18日付メール その2

わたしが敬愛する施光恒さんのブログです。「本日の情報(11/18)その1」でお送りした米国の現在の状況についての考察がされています。施さんが監訳されたマイケル・リンドの「新しい階級闘争」(東洋経済新報社)は面白そうなので、早速アマゾンに注文しようと思います。 ~~~~~ ■□━━━━━━━━━━━━━━━━□■  2022年11月18日  「グローバル派」vs「ナショナル派」の  対立解消のために必要なこと  From 施 光恒(せ・てるひさ)     @九州大学 ■□━━━━━━━━━━━━━━━━□■ おっはようございまーす(^_^)/ 調査会社ユーガブが今年8月下旬に実施した世論調査によれば、米国民の43%に当たる人々が10年以内に米国で内戦が起きる可能性について「非常にあり得る」「いくらかはあり得る」と回答したそうです(『アエラ』2022年10月31日号)。 先週行われた中間選挙を見ても、米国民の分断は相変わらず深刻のようですね。両陣営とも選挙結果をなかなか受け入れようとしませんでしたし、選挙戦でも互いに罵り合っていました。米国の民主主義は大丈夫なんだろうかと心配になります…。 私も邦訳出版に関わっているので宣伝めいて恐縮なのですが、米国民のこうした大分断状況を考えるのに良い本があります。ちょうど本日が発売日です。テキサス大学教授のマイケル・リンド氏が書いた『新しい階級闘争――大都市エリートから民主主義を守る』(中野剛志解説、施光恒監訳、寺下滝郎訳、東洋経済新報社、2022年11月18日発売予定)という本です。 タイトルが示す通り、リンド氏は現在の米国民の分断は「新しい階級闘争」だと見ます。 一方の陣営は、リンド氏が「管理者(経営者)エリート」と呼ぶ層です。グローバル化の恩恵を受け、新自由主義(小さな政府主義)の政策を支持し、移民の大規模な受け入れや同性婚などリベラルな社会政策も積極的に支持する人々です。 他方は、学歴、収入ともにさほど高くなく、地方に暮らす者が多い庶民層です。 「グローバル派」vs「ナショナル派」、または「地球市民」vs「各国民」という対立だといってもいいかもしれません。 リンド氏は、現在の米国民の分断の解消策を考えるため、かつての「古い階級闘争」、つまり資本家層と労働者層との対立がどのように緩和されたかを振り返ります。 リンド氏の分析によれば、古い階級闘争は、戦後の「民主的多元主義」の政治を通じて解消に向かいました。政府が調整役となり、資本家と労働者、大都市と地方、各種の業界の利害をなるべく公正に保つ政治です。政府は、労働組合、農協などの協同組合、各種業界団体、地方団体、教会といった多様な中間団体の要求に耳を傾け、利害調整に当たりました。 この「民主的多元主義」という調整型の政治が欧米で広まったきっかけは主に第二次大戦です。戦時中、各国は総力戦に従事するため、各国政府はそれぞれ国内の利害調整に乗り出しました。戦後、平和になったのちも西側諸国ではこの調整型の政治を継続したゆえに、経済成長と国民福祉の向上を両立し、非常に安定した社会を建設することができたのです。 しかし、1980年代初頭からの新自由主義的政策の広まりや冷戦終結後のグローバル化のなかで、安定した社会は徐々に壊されていきます。 グローバル化の進展以降、労働組合などの中間団体が機能しにくくなったからです。海外への生産拠点の移動、外国人労働者や移民の受け入れなどが容易になったため、グローバルな企業や投資家の側は、国内の労働者層と妥協しようとはしなくなりました。また、各種の中間団体を「抵抗勢力」として排除する傾向も強まりました。 庶民の声は、いつの時代もバラバラの個人に留まっていたのでは影響力を持つことができません。団体を組織しなければ、庶民層の見解は政治に反映されないのです。 現在の「新しい階級闘争」は、エリート層が「民主的多元主義」の政治を捨て去り、庶民層に配慮しなくなったことと、それに対する庶民側からの強い反発から生じています。 リンドは、安定した社会を米国に取り戻すには、現代においてもやはり調整型の政治が必要だと強調します。労組などの中間団体を再生し、民主的多元主義の政治を復活させるべきだと説きます。また、そのためにグローバル化推進策を見直す必要も訴えます。 リンド氏の主張は、近年の日本の主流派の議論とまったく逆です。リンド氏は、グローバル化自由民主主義の政治と相性が非常に悪いと指摘します。自由民主主義の政治を実現するには、つまり「公正さ」「民主主義」「平等(格差是正)」「自由」といった価値を重視する真っ当な政治を成り立たせるには、やはり国(ネイション)を基本的単位としなければならないと論じます。 また、リンド氏の主張が正しいとすれば、新自由主義的な構造改革ではなく、戦後日本が「日本型市場経済」とかつて誇った調整型の政治こそ、自由民主主義の観点から見ても、安定した社会の構築という点から考えても、実は大いに優れていたことになります。 本書の議論が、日本人の米国理解を改善すると同時に、グローバル化路線の見直しや戦後日本の調整型政治の再評価につながることを切に願います。 長々と失礼しますた <(_ _)> こちらは佐藤健志さんのプロモーションビデオです。タイトルは「2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却」です。2025年問題とは、日本が終わるか、日本の戦後を終わらせるかだと言います。 福田恆存さんの名言、「歴史を持つ社会は、みずから解決し得ぬような病を決して背負い込まない」にある通り、日本人は忘れてしまった日本の歴史を、もう一度学び直すことから始めるべきでしょう。 この動画は11/20まで視聴出来ます。 佐藤健志の2025ニッポン終焉vol.1 (38news.jp)

成田透氏のプロフィール
日本アイ・ビー・エム(株)に30年勤務。システムズ・エンジニア(SE)として、金融機関(都銀・長信銀)を担当。退職時は金融システム・ソリューション部長。
退職後はIBM関連会社の役員を歴任。最後は(株)エムティーアイで常務取締役ITセンター長。
数々の大規模システムの構築や大規模プロジェクトを成功裏に実施した。現在72歳。